平成28年度「日本文化藝術奨学金」奨学生に、豊海健太、川人 綾、栗田ふみか、菅 実花、堀 千夏、國清尚之の6名が決定した。
同助成は「創造する伝統賞」を主催する公益財団法人日本文化藝術財団によるもので、国内の芸術系大学院に在学する学生を対象とする。今回の選考委員を務めたのは天野喜孝(イラストレーター)、木村博昭(建築家/京都工芸繊維大学教授)、寺脇 研(映画・落語評論家/(特非)ジャパン・フィルムコミッション理事長)、成田宏紀(㈳国際芸術文化振興会理事兼事務局長)、原 高史(現代美術家/東北芸術工科大学准教授)、藤本由紀夫(現代芸術家/京都造形芸術大学教授)の6氏。それぞれの選評は以下。
■豊海健太
(金沢美術工芸大学大学院美術工芸研究科美術工芸専攻工芸)
【選評】
漆芸という技法を使って平面表現に挑むというユニークな試みに、素材と表現方法を探す前向きな姿勢が感じられる。試行錯誤を繰り返す中で自分らしいものを見つけて行く途上にあるようだが、大学院進学後の作品に特に進境があり、これからの展開が期待できる。
■川人 綾
(東京藝術大学大学院美術研究科美術専攻先端芸術表現)
【選評】
「制御とズレ」という現代的なテーマを、「絣織」という伝統的技法で表現するところに新鮮な魅力を感じる。グラフィック的な要素もあり、すぐれた感覚を持っている中、「制御とズレ」の関係性についての視点と考査が作品にきちんと反映し始めている。
■栗田ふみか
(女子美術大学大学院美術研究科美術専攻版画)
【選評】
水性木版画という柔らかい表現方法を使って、お風呂という誰もが共感できる題材から見る者を作者の世界観へ導いてくれる。「浄化」というテーマも表現方法に合っており、浮世絵以来の伝統を持つ木版画の可能性を、作品を通して世界に発信してほしいと思わせる。
■菅 実花
(東京藝術大学大学院美術研究科美術専攻先端芸術表現)
【選評】
アンドロイドという新しい存在を使ってどのような表現をしていくのか、興味をそそる。「生殖と人工身体」をテーマに、人型造形物と身体改造の文化史を関連づけるなど、更なるコンセプト確立と作品制作のオリジナル性の発展をこれから見ていきたい。
■堀 千夏
(東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻映画制作技術)
【選評】
本奨学金において初の映画分野の作品である。映画専攻の大学院自体が稀少な中、しかも映画研究や監督、脚本といった主流でなく映画美術という分野で意欲的な取り組みに挑んでいる。また、実際の映画製作に即して新しい試みを行っている姿勢にも注目したい。
■國清尚之
(東京藝術大学大学院美術研究科建築専攻建築設計)
【選評】
これまで建築分野で作品制作の奨学対象者がいなかった中、しかも「墓」を設計するというユニークな発想を持つ作品である。死や死者に対する価値観が刻々と変化している現在、それを建築を通して現実化するための研究と制作は貴重なものになってくるだろう。
【関連リンク】公益財団法人日本文化藝術財団:日本文化藝術奨学金
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