今年も多数の展覧会が開催され、様々なニュースが駆け巡った美術界。その1年をArt Annual onlineのアクセス数で回顧する。(集計期間:2016年1月1日~12月27日) なおあわせて2016年後半の展覧会入場者数レポートもチェックしてほしい。
1位 「若冲展」に最大で5時間以上の長蛇の列、美術館の対策は?
今年の一大ニュースといえば、4月から5月にかけて東京都美術館で開催された「生誕300年記念 若冲展」だろう。東京で初めて『釈迦三尊像』3幅(相国寺蔵)と『動植綵絵』30幅(宮内庁三の丸尚蔵館蔵)が一堂に展示され、31日間と短い会期ながらも44万人以上が押し寄せた。一日平均では約14,000人と同館の過去最高記録を更新し、最大で5時間以上の列はSNSでも話題に。給水所の設置や日傘の貸出しといった美術館側の対策を紹介し、“若冲フィーバー”に比例するかのように今年断トツのアクセス数を集めた。
Art Annual online恒例となっている年間入場者数レポートの2015年版がランクイン。この年のトップは70万人超の「モネ展」であった。そのほか特徴的なものとして、ファミリー層を中心に人気を集めた「チームラボ展」(3位)や、大きな話題を呼んだ「春画展」(16位)が挙げられる。2016年版は近日アップ予定。
3位 日本初!現代写真の巨星 トーマス・ルフ、東京国立近代美術館で回顧展開催決定
ベッヒャー派のドイツ現代写真家トーマス・ルフ。その日本初の回顧展が東京国立近代美術館で開催され、大きな注目を集めた。開幕前日にはルフ本人が来日。高さ約2メートルの巨大なポートレート作品、天体、都市風景、ヌードなど、初期から未発表の最新作まで幅広い展観となった。展覧会は現在金沢21世紀美術館に巡回中(2017年3月12日まで)。
4位 原美術館が「快楽の館」に…篠山紀信が全作撮り下ろしの新作個展を開催
9月より原美術館で開催されている、篠山紀信展「快楽の館」。同館を舞台とした撮り下ろしのヌード写真は、SNSを中心に話題を呼んだ。篠山は会期中のアーティストトークで「1938年設立の原美術館は、歴史と魅力ある舞台。さらに私設のため制約がなく、”限りなく撮れる”場所だった」と述べている。森村泰昌、宮島達男、奈良美智の常設展示とのコラボレーションも見どころの一つ。会期は2017年1月9日まで。
5位 伊藤若冲を見るならここ!Google、美術館…「若冲展」の代替案を考える
その行列に観覧をあきらめる声も少なくなかった、東京都美術館の「若冲展」。本記事では「どうしても若冲の作品が見たい!」という方に向けて、代替案を探った。京都国立博物館「特集陳列 生誕300年 伊藤若冲」は1月15日まで開催中。さらに、オンライン上で《樹花鳥獣図屏風》を見る方法も紹介している。1位に続き、若冲関連のこちらの記事も人気を集めた。
6位 日本初!ゲルハルト・リヒターの最新作を恒久展示するスペースが瀬戸内に誕生
瀬戸内海のほぼ中央に浮かぶ無人島・豊島(愛媛県上島町)で、ゲルハルト・リヒターの立体ガラス作品の一般公開がスタート。今回の恒久展示はリヒターが2011年秋に瀬戸内海を初めて訪問し、滞在した豊島の風景や自然が気に入ったことから実現したもので、施設デザインもリヒター自身が担当。2015年は六本木での個展がArt Annual onlineの年間アクセスランキング5位となったが、今年もリヒター人気は根強かった。
7位 江戸時代の”ゆるかわいい”禅の教え―大仙厓展が10月より開催
東京・丸の内の出光美術館で開催された、江戸時代の禅僧・仙厓の名品展がランクイン。現在の“ゆるかわいい”という言葉にも通じるようなユーモラスな禅画が、多くの人にとって新鮮に映ったのではないだろうか。会場では、鑑賞者の笑顔も印象的だった。東西の三大コレクションが実に30年ぶりに勢揃いする、貴重な機会となった。
8位 森山大道、荒木経惟ら6人の写真家の日常追ったドキュメンタリーが3日間限定上映
ポルトガル人アーティストのアンドレ・プリンシペとマルコ・マルティンスによるドキュメント映画『TRACES OF A DIARY – 日記をたどる』。森山大道、荒木経惟、中平卓馬、ヒロミックス、梶井松陰、吉行耕平といった6名の日本人写真家の日常を16ミリフィルムで追った同作が神宮前で上映され、3日間限定ということもあり大きな話題を呼んだ。チケットは完売し、好評を受けて後日再上映されるほどであった。
9位 第57回ヴェネチア・ビエンナーレ、日本館出品作家は岩崎貴宏に決定
2017年5月13日~11月26日に開催される「第57回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展」。日本館の出品作家が岩崎貴宏に、そしてキュレーターが鷲田めるろに決定した。岩崎は歯ブラシや雑巾など身近なものを素材に使い、繊細な作品を作り上げることで知られる。今回は「Upside-down Forest -逆さにすれば森-」(仮)をテーマとし、「日本的」な表現を目指すとのこと。果たしてどのように実現されるのか、期待は高まる。
10位 アメリカで最も重要な写真家 ライアン・マッギンレー来日!日本初美術館個展開催
東京オペラシティ アートギャラリーで開催された、ライアン・マッギンレーの日本初の美術館個展が10位に。広大な自然を舞台とするその解放的なヌード写真が並んだ今展は、まさに待望の企画だったといえるだろう。特に約20mのインスタレーション作品《YEARBOOK》は圧巻であった。
【関連記事】
レポート:2016年前半の主な展覧会を振り返る
ルノワールに67万人!西洋美術巨匠強し―2016年後半の主な展覧会を振り返る