日本画家・畠中光享（1947年奈良県生まれ、Artist Group―風―メンバー）が興福寺「中金堂」再建に際し、14人の祖師画を制作した。その奉納に先立ち、祖師画の初公開とともに、興福寺の宝物や、畠中の代表作などが出品する展覧会が全国を巡回する。開催館のひとつ、新潟市新津美術館・横山秀樹館長の寄稿から紹介する。

畠中光享　興福寺中金堂法相柱 柱絵「慈恩大師」2016年　135×86cm

十四祖師像、貴重な初公開：横山秀樹（新潟市新津美術館館長）

「興福寺の寺宝と畠中光享展」が、興福寺の中金堂再建記念と法相柱柱絵の完成記念として、東京、富山、茨城、横浜、奈良、新潟、酒田、大阪と全国八会場で開催される。

現在、法相宗大本山興福寺では、創建時の伽藍復興が進められており、伽藍の中心であった「中金堂」も、2018年の秋に落慶の予定である。中金堂の内陣柱十四本の一つとして、高さ10メートルにもおよぶ「法相柱（ほっそうちゅう）」も建てられ、興福寺の教義である法相唯識の祖師が貼りあげられる。

畠中光享　興福寺中金堂法相柱 柱絵「無著菩薩」2016年　195×70cm

畠中光享氏によって描かれた法相宗の十四人祖師像は、巡回展でお披露目されたあとは興福寺に奉納され、中金堂の落慶時には法相柱に貼りあげられた状態で、五百年、千年と人々の信仰を集め、興福寺を見守り続けていくことになる。

今回の中金堂再建にあたり、興福寺の法相の教義である十四祖師像の柱絵の制作は、仏教について長年にわたり研究し深い知識を持つ日本画家の畠中光享氏が担われた。畠中氏は４年の歳月をかけて入念に祖師の事績を文献などで調べ、一人一人の祖師の特徴をふまえて描きあげた。

このたびの展覧会では、奉納に先立ち完成した十四人の祖師像すべてが、法相柱に貼り込められる前の姿で初公開され、間近に見ることの出来る、最初で最後の貴重な機会となる。

畠中光享氏は、インドから日本にいたる仏教の伝来に造詣が深く、仏伝や仏教に関わる事蹟を題材にした日本画をライフワークとして制作している。畠中氏の描く仏教世界は、仏典の研究に踏まえられた独自の世界を構成しており、現代の仏教絵画として今に生きる私たちにとって、共感を覚える内容となっている。

今回の展覧会は、興福寺に伝わる貴重な寺宝の数々と、畠中光享氏が制作した法相の十四祖師像や、これまでの代表作による仏教世界が色鮮やかに展開する、「興福寺の寺宝と畠中光享展」として紹介される。

また、一部の美術館では、興福寺所蔵の国宝「中金堂鎮壇具」「燈籠火袋羽目」、「千手観音菩薩像内納入品」や重要文化財の「色紙薬師経」「興福寺別当次第」の寺宝なども紹介される予定である。

畠中光享「濁水に汚されない蓮のように」2014年　二曲一双屏風のうち一隻　172×182cm

重要文化財「薬師如来坐像」平安時代　1013年　※富山展に出品

国宝「中金堂鎮壇具」　奈良時代　※富山展に出品

興福寺中金堂再建・法相柱 柱絵完成記念　興福寺の寺宝と畠中光享展

【会期】 2017年2月10日(金)～3月20日(月・祝)

【会場】 富山県水墨美術館（富山市五福777）

【TEL】 076―431―3719

【休館】 月曜、3月20日(月・祝）は開館

【開館】 9：30～18：00（入室は17・30まで）

【料金】 一般900円　大学生650円

【巡回】 4月8日(土)～5月14日(日)茨城県天心記念五浦美術館、5月19日(金)～29日(月)横浜髙島屋、6月13日(火)～7月2日(日)興福寺会館、8月23日(水)～9月４日(月)大阪髙島屋、9月9日(土)～10月15日(日)新潟市新津美術館、11月18日(土)～12月24日(日)酒田市美術館

■講演会　（聴講無料、要観覧券）

仏女が語る仏像の見方

講師：田中ひろみ氏（イラストレーター、文筆家、仏女）

日時：2017年2月19日(日) 14：00～

※本講演会のみ往復はがきでの申込が必要

興福寺の歩みと教え

講師：多川俊映 師（興福寺貫主）

日時：2017年2月26日(日) 14：00～

興福寺法相柱絵と私の仏教絵画について

講師：畠中光享氏（日本画家）

日時：2017年3月5日(日) 14：00～

【関連リンク】 興福寺の寺宝と畠中光享展