若冲! 日本の“異端”から世界のメジャーへ
トップは「ルノワール展」66万人、超えられない「40万人の壁」?
2016年に開催された大型展覧会を主催者にアンケート調査し、入場者数の結果を会期、会場、1日平均と共に「BEST30」として表にあげた。西洋美術の巨匠が大量動員している傾向は変わらないが、昨年は奇想の画家、とりわけ伊藤若冲ブームに沸いた1年だった。首都圏のみならず各地で大小の「若冲展」があり、年代層も幅広い観覧者が訪れた。さらに鈴木其一や歌川国芳ら異端、奇想の画家たちの展観にも高い関心が寄せられた。
展覧会名 会期 会場 主催 入場者数 1日平均 1 4/27~8/22 国立新美術館 667,897 6,422 2 3/8~6/12 国立科学博物館 508,282 5,776 3 7/7~9/11 六本木ヒルズ展望台 東京シティビュー内スカイギャラリー ※502,854 ※7,505 4 15.10/27~2/21 東京国立博物館 483,809 5,147 5 4/22~5/24 東京都美術館 446,242 14,395 6 3/1~6/12 国立西洋美術館 394,006 4,283 7 10/8~12/18 東京都美術館 391,721 6,318 8 9/14~12/12 国立新美術館 388,557 4,982 9 7/8~10/2 国立科学博物館 333,037 4,061 10 14.10/30~3/6 森美術館 315,271 2,463 11 1/16~4/3 東京都美術館 304,686 4,416 12 3/1~5/8 京都市美術館 302,312 4,956 13 7/15~9/25 豊田市美術館 294,258 4,458 14 7/30~17.1/9 森美術館 270,895 1,651 15 1/16~4/10 東京都江戸東京博物館 270,012 3,553 16 10/7~1/21 上野の森美術館 269,082 2,539 17 8/31~11/30 足立美術館 235,381 2,558 18 7/9~9/25 大阪市立美術館 231,781 3,311 19 7/5~10/2 国立国際美術館 230,559 2,918 20 3/26~7/10 森美術館 ※225,361 ※2,106 21 10/4~12/4 京都市美術館 224,821 4,088 22 7/5~8/28 東京都江戸東京博物館 217,674 4,353 23 3/19~6/5 Bunkamura ザ・ミュージアム 215,230 2,724 24 9/13~1/9 東京国立博物館 212,144 2,210 25 15.12/22~2/21 福岡市美術館 208,994 4,019 26 10/22~11/7 奈良国立博物館 208,614 12,271 27 7/1~9/4 京都市美術館 208,573 3,596 28 6/11~9/22 東京都美術館 206,462 2,294 29 15.9/20~1/11 神戸市立博物館 202,231 2,107 30 6/21~9/19 東京国立博物館 199,567 2,495 芸術祭入場者数 3/20~4/17、7/18~9/4、10/8~11/6 直島、豊島、女木島等 1,040,050 9,630 9/17~11/20 茨城県北地域6市町 776,000 11,938 8/11 ~10/23 愛知芸術文化センター、名古屋市美術館等 601,635 8,130 9/24~12/11 与野本町駅~大宮駅周辺等 361,127 4,571 10/9~11/27 旧後楽館天神校舎跡地、岡山県天神山文化プラザ等 234,080 5,320 9/3~9/25 山形県郷土館「文翔館」、とんがりビル等 60,627 2,6362016年展覧会入場者数BEST30
入場者数
ルノワール展
(104)国立新美術館、オルセー美術館、オランジュリー美術館、日本経済新聞社
恐竜博2016
(88)
国立科学博物館、朝日新聞社、テレビ朝日
ジブリの大博覧会~ナウシカから最新作『レッドタートル』まで~
(67)
東京シティビュー
始皇帝と大兵馬俑
(94)
東京国立博物館、NHK、NHKプロモーション、朝日新聞社
生誕300年記念 若冲展
(31)
東京都美術館、日本経済新聞社、NHK、NHKプロモーション
カラヴァッジョ展
(92)
国立西洋美術館、NHK、NHKプロモーション、読売新聞社
ゴッホとゴーギャン展
(57)
東京都美術館、東京新聞、TBS
ダリ展
(78)
国立新美術館、ガラ=サルバドール・ダリ財団、サルバドール・ダリ美術館、国立ソフィア王妃芸術センター、読売新聞社、日本テレビ放送網、BS日テレ
海のハンター展
(82)
国立科学博物館、日本経済新聞社、BSジャパン
村上隆の五百羅漢図展
(128)
森美術館、朝日新聞社、NHKプロモーション
ボッティチェリ展
(69)
東京都美術館、朝日新聞社、TBS
マルモッタン・モネ美術館所蔵モネ展
(61)
他京都市美術館(京都市)、マルモッタン・モネ美術館、読売テレビ、読売新聞社
ジブリの立体建造物展
(66)
豊田市美術館、中日新聞社、中京テレビ放送
宇宙と芸術展:かぐや姫、ダ・ヴィンチ、チームラボ
(164)
森美術館、NHK、NHKプロモーション、読売新聞社
レオナルド・ダ・ヴィンチ―天才の挑戦
(76)
東京都江戸東京博物館、毎日新聞社、NHK、NHKプロモーション
デトロイト美術館展
(106)
フジテレビジョン、産経新聞社、ぴあ、上野の森美術館
あなたが選ぶ“この1点”頂上決戦
(92)
足立美術館
デトロイト美術館展
(70)
関西テレビ、産経新聞社
始皇帝と大兵馬俑
(79)
国立国際美術館、陝西省文物局、陝西省文物交流中心、NHK大阪放送局、NHKプラネット近畿、朝日新聞社
六本木クロッシング2016展
(107)
森美術館
生誕300年 若冲の京都 KYOTOの若冲
(55)
京都市美術館、MBS、京都新聞
大妖怪展 土偶から妖怪ウォッチまで
(50)
東京都江戸東京博物館、読売新聞社
俺たちの国芳 わたしの国貞
(79)
Bunkamura、ボストン美術館、日本テレビ放送網、読売新聞社、BS日テレ
平安の秘仏―滋賀・櫟野寺の大観音とみほとけたち
(96)
東京国立博物館、櫟野寺、読売新聞社
マルモッタン・モネ美術館所蔵モネ展
(52)
福岡市美術館、マルモッタン・モネ美術館、FBS福岡放送、読売新聞社
第68回正倉院展
(17)
奈良国立博物館
ダリ展
(58)
京都市美術館、ガラ=サルバドール・ダリ財団、サルバドール・ダリ美術館、国立ソフィア王妃芸術センター、読売新聞社
ポンピドゥ・センター傑作展
(90)
東京都美術館、朝日新聞社、TBS
大英博物館展 100のモノが語る 世界の歴史
(96)
神戸市立博物館、朝日新聞社、NHK神戸放送局、NHKプラネット近畿
古代ギリシャ―時空を超えた旅―
(80)
東京国立博物館、ギリシャ共和国文化・スポーツ省ほか
瀬戸内国際芸術祭 2016
(108)
瀬戸内国際芸術祭実行委員会
KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭
(65)
茨城県北芸術祭実行委員会
あいちトリエンナーレ 2016
(74)
あいちトリエンナーレ実行委員会
さいたまトリエンナーレ 2016
(79)
さいたまトリエンナーレ実行委員会
岡山芸術交流 2016 Okayama Art Summit 2016
(44)
岡山芸術交流実行委員会
みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ2016
(23)
東北芸術工科大学
●調査対象:全国で開催された展覧会の中から、2016年1月~12月に会期がかかるものを任意で抽出。
●会期:カッコ内は開催日数。 ●入場者数:基本的に主催館発表による。 ●「六本木クロッシング2016展」「ジブリの大博覧会~ナウシカから最新作『レッドタートル』まで~」は森美術館・東京シティビュー連動入館者数を記載。
トップはオルセー美術館・オランジュリー美術館所蔵の「ルノワール展」で66万人。《ムーラン・ド・ラ・ギャレット》をはじめ傑作名作が揃い、確かに見応えある内容だった。2位、「恐竜博2016」も50万人を超えた。恐竜ものは各地で幾つも開かれているが、次々と新発見の化石や骨が展示され、話題が広がる。その度に子供から大人までが興味をもって会場を訪れる。見せ方の進化、研究もあって今後も恐竜ブームは確実に続くという。また、表で40万人超えは5展観のみ。38~39万人までは伸びてもあと少しが足りず、40万人の「壁」がある。
特筆すべきは、やはり生誕300年の若冲だろう。31日間で1日平均1万4千人の来場者。20年前までは日本ですら殆ど知られず、異端視されていた若冲。それがいまや外国人も驚嘆評価するメジャーアーティストになった。サントリー美術館で開かれた江戸琳派「鈴木其一展」も再評価された。現代的デザイン感覚の《朝顔図屏風》などには多くの観客が見入っていた。さらに渋谷・Bunkamuraでの歌川国芳の大胆な発想の展観には予想以上の来場者があった。今後こうした奇想、異端系の日本画家に目が向けられ、展観されていくのではないかと、新聞社文化事業の関係者は語る。
「芸術祭イヤー」とも言われた2016年の、各芸術祭の入場者数もあわせて調査した。「瀬戸内国際芸術祭」は3つの会期を合わせて104万人。2013年の107万に続き、100万人超えの大台を達成した。また初開催の「茨城県北芸術祭」「さいたまトリエンナーレ」「岡山芸術交流」は、それぞれ当初の目標を超える入場者数を記録。今年も「北アルプス国際芸術祭」や「種子島宇宙芸術祭」が新たに開催されるなど、芸術祭ブームはまだ続きそうだ。その中で「札幌国際芸術祭」は「芸術祭ってなんだ?」を今回のテーマとしており、芸術祭の在り方について内側から考える機会も提供されるだろう。
(編集部)
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