「一般社団法人 アート東京(以下「アート東京」)」は「日本のアート産業に関する市場調査 2016」を実施し、その市場規模を3,341億円と推計した。各種コンテンツ産業の市場規模と比較すると、映画市場規模の約2,171億円(※1)、アニメ市場規模の約1,847億円(※2)などを上回る結果となる。
調査を行った「アート東京」は、日本最大級のアート見本市「アートフェア東京」を主催し、昨年には日本で最も歴史の長いアートフェア「東美特別展」にも携わった。これまでのアートマーケットは、主に欧米のギャラリーやオークションセールスの落札額の合計値等の情報を中心に推計されていたが、今回、日本からの客観的な指標を国内外に公表することを目的に実施。インターネットアンケート会社が保有するモニターを対象に、1次と2次の2段階でアンケートをとった。1次調査では20,541の回答を、2次調査では過去3年間において100万円以上の美術品を購⼊している「企業の経営者・役員」もしくは「個⼈事業主・店主」から143の回答を調査・分析した。調査期間は2016年9⽉26⽇(⽉)~10⽉2⽇(⽇)。
アンケートの結果から、美術品の購⼊額は2,431億円と推計された。うち2,037億円が国内事業者からの購⼊で、国内の画廊・ギャラリー(792億円)、国内の百貨店(627億円)が大きな割合を占める。欧⽶諸国では百貨店で美術品を購⼊するという慣習は薄いと考えられるため、⽇本の流通は特徴的であるといえる。作家からの直接購⼊(219 億円)も多い。ジャンル別の市場規模の推計結果は洋画が最も⼤きく452億円、次いで現代美術(平⾯)の415億円、陶芸の405億円などが⼤きかった。現代美術・写真・映像作品の合計は608億円であった。
「美術館・博物館⼊場料」は428億円、アートプロジェクト消費は79億円と推計され、合計は507億円。また、著名な絵画を複製したポストカードやグッズ、展覧会の図録や美術書などの「美術関連品」は403億円にのぼることもわかった。これらをあわせ、日本のアートの市場規模は3,341億円と推計された。
美術品のうち最も購⼊経験率が⾼いものは「陶芸」(5.4%)、美術関連品のうち最も購⼊経験率が⾼いものは「著名な絵画を複製したポスター・ポストカード」(14.3%)であった。また「美術品」の購⼊経験は13.3%、「美術品関連品」の購⼊経験は17.9%。現代美術全般の購⼊者の36%は、古美術を購入していることもわかる。
調査結果の詳細はwebで公開中。同調査は今後毎年行う予定で、次回以降は定点観測の結果も一部公表を予定している。
※1 出所:日本映画製作者連盟「日本映画産業統計(2015)」
※2 出所:日本動画協会「アニメ産業レポート2015」