初代長次郎から十五代吉左衞門まで、一子相伝の形で制作が続けられてきた「樂焼」450年の歴史をたどる「茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術」が、3月14日より東京・竹橋の東京国立近代美術館で開催される。
本展は、2015年にロサンゼルス・カウンティ美術館、サンクトペテルブルク・エルミタージュ美術館、モスクワ・プーシキン美術館で開催され約19万人を動員した「樂-茶碗の中の宇宙」展の凱旋展。千利休が愛した初代長次郎の黒樂茶碗「大黒」をはじめ、歴代の重要文化財のほとんどを一挙公開するほか、本阿弥光悦の名碗「赤樂茶碗 銘 乙御前」や俵屋宗達らの絵画など、選りすぐりの優品もあわせて展示される。当代吉左衞門が「私が生きている間に二度とこれほどの規模の展覧会は開催できない」と語る、かつてない展覧会である。
展示会場入り口では、初代 長次郎《二彩獅子》(重要文化財)が来場者を迎えてくれる。作品腹部に「天正二年春 長次良依(寵)命 造之」と彫銘があり、長次郎が茶碗制作を始める以前に造ったものとされる。樂焼はもとより、京焼上絵陶の成立をたどる上でも重要な作品。
最初の展示室には初代 長次郎の茶碗が並ぶ。《黒樂茶碗 銘 大黒》《赤樂茶碗 銘 無一物》など千利休の侘び茶の思想を反映し、装飾性を完全に排した手捏ねの茶碗は、中国・朝鮮のやきものが最上とされた当時にあって「非常にアヴァンギャルド」な表現であった。
樂歴代の作品が時代順に並ぶ。450年一子相伝で伝わってきた樂焼だが、個性が際立つ多様な表現は各代それぞれが自らの表現を追求したことを伝えている。
樂歴代随一の名工とされる三代 道入の《黒樂茶碗 銘 青山》(重要文化財)。黒釉、白釉、透明釉などを用いた装飾的な表現で知られる。また、本阿弥光悦と交流が深く、光悦の黒樂茶碗のほとんどは常慶、道入親子によって焼かれている。
四代 一入《赤樂獅子香炉》と五代 宗入《黒樂獅子香炉》。初代 長次郎の獅子のモチーフは二代 常慶以降も手がけられている。茶碗だけでなく香炉や鉢、花入れ、水指なども見どころ。
《洛中洛外図屏風》は3月14日から4月9日までの展示。5月2日からは俵屋宗達《舞楽図屏風》(重要文化財)が展示される。
樂歴代の展示の締めくくりは、次期十六代 篤人(あつんど)の茶碗。
当代十五代吉左衞門は1981年に十五代を襲名。伝統に根ざしながらも現代性へと大きく踏み出した造形性が特徴で、特に「焼貫」の技法を駆使し、大胆な篦削りによる彫刻的ともいえる前衛的な作風を築き上げている。フランス・ルビニャック村で制作したシリーズも展示。
美術館ロビーでは、映画『利休にたずねよ』(2013年)で利休役の市川海老蔵、妻・宗恩役の中谷美紀が実際に茶を点てた長次郎《万代屋黒》を、3Dスキャンして再現した茶碗を展示。手に取って触れることもできる。
十五代 樂吉左衞門がプロデュースした佐川美術館の茶室をVRで体験できる「十五代 樂吉左衞門オリジナルハコスコ」を販売(税込2,200円)。お得な展覧会図録とのセットも。
【展覧会】茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術
【会期】2017年3月14日(火)~5月21日(日)
【会場】東京国立近代美術館(千代田区北の丸公園3-1)
【TEL】03-5777-8600(ハローダイヤル)
【休館】月曜(3月20日、3月27日、4月3日、5月1日は開館)、3月21日(火)
【開館】10:00~17:00(金曜は20:00まで)※入館は閉館30分前まで)
【料金】 一般1,400円 大学生1,000円 高校生500円 中学生以下、障がい者手帳所持者および付添者無料
■特別茶会
【協力】武蔵野美術大学 茶乃会、多摩美術大学 茶道研究會
【日時】3月25日(土)・26日(日)・4月1日(土) 各日とも午前の部11:00~、午後の部14:00~(各先着100名)
【会場】東京国立近代美術館 前庭(野外)
【料金】無料(要当日観覧券)
■記念講演会
【講師】十五代 樂吉左衞門
【第1回】長次郎と樂歴代の流れ 展覧会作品解説を中心に:3月14日(火) 開演13:30~15:00(開場13:00)
【第2回】長次郎の現在性、現代から見た樂茶碗の世界:4月1日(土) 開演13:30~15:00(開場13:00)
【会場】東京国立近代美術館 B1 講堂(各日先着140名)
【料金】無料(要当日観覧券)
■対談
【第1回】近藤誠一(元文化庁長官)×十五代 樂吉左衞門:3月26日(日) 開演11:00~12:20(開場10:30)
【第2回】中村桂子(JT生命誌研究館 館長)×十五代 樂吉左衞門:3月26日(日) 開演11:00~12:20(開場10:30)
【会場】東京国立近代美術館 B1 講堂(各日先着140名)
【料金】無料(要当日観覧券)
【関連リンク】「茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術」特設サイト