創立130年を迎える東京藝術大学が、クラウドファンディングサービス「Readyfor」との連携により、新たなアーティスト支援や芸術振興を目的とした「東京藝大×クラウドファンディング」を4月6日よりスタートさせた。11件のプロジェクトを通じて総額約2,500万円の支援を目指す。
同大学は昨年、Readyforを利用したクラウドファウンディングにより、「巨匠の響きよ永遠に!藝大に遺されたレコード2万枚の危機を救う」(目標500万円)、「失われた壁画を完全復元し黄金のアフガニスタンを取り戻したい」(目標400万円)という2つのプロジェクトの資金を調達しており、この実績を踏まえて今回は、同社との業務提携による全学的な取組みとしてプログラムを立ち上げた。
6日のキックオフイベントで澤和樹学長は、「日本の文化芸術系予算の国家予算に占める割合は0.1%しかなく、西欧先進国のみならず韓国と比較しても10分の1。また、国が大学改革を推進しているなか、各大学側も自発的な動きを起こそうとしている」とプログラムの背景を説明。「今回の取組みを通じて藝大の様々な活動を広く知ってもらいファンを作り出すとともに、社会が芸術家や芸術をサポートできる文化を醸成していくことができれば」と意欲を見せた。Readyforの米良はるか代表も「ルーヴル美術館をはじめ、アート分野におけるクラウドファウンディングの活用は世界的に広がっている」とし、日本における“新時代のパトロン制度”を目標にしたいと述べている。
「日本三大絵巻最後の作品、国宝『信貴山絵巻』の現状模写に挑む!」について説明する日本画研究室の手塚雄二教授。同プロジェクトは、奈良国立博物館が所蔵する本作の現状模写に掛かる費用200万円の支援を募集する。完成までに11年を要するこの一大プロジェクトについて手塚教授は、その教育的な意義を説明するとともに、国宝に指定されている原本では困難な海外展示の可能性を示し、「日本絵画の原点と言えるこれらの絵巻物を海外に紹介することは、日本のアイデンティティーを示すことにつながる大事な取組みだと確信しています」と語った。
同大学演奏藝術センターの大石泰教授の「戦没学生の音楽作品よ、甦れ!楽譜に命を吹き込み今、奏でたい。」は、太平洋戦争で戦地に赴き命を落とした学生の作品を現代に甦らせるための資金300万円の調達を目標とする。「お礼状、東京藝大アーカイヴ友の会会員証」(3,000円)から「大学史料室の貴重資料を活用した特別なコンサートにご招待」(100,000円)まで5種類のリターンから選んで支援が可能だ。
その他、支援を募集しているプロジェクトは以下の通り(4月6日時点)。
■知られざるシマノフスキの魅力を日本で。デュオ・リサイタル開催(澤和樹、目標:150万円)
■藝大キャンパスの保存林を永く愛される森として守り続けたい(清水泰博・君塚和香、目標:100万円)
■佐藤雅彦研究室/表現手法の探求 短編映画群 “filmlet C” 製作(c-project、目標:500万円)
■太陽の塔だけ? 大阪万博 バシェの音響彫刻を復元!(東京藝術大学バシェ音響彫刻修復プロジェクトチーム、目標:200万円)
■世界初 クラシック曲”四季”をアニメ化!気鋭の映像作家4人が競作(岡本美津子、目標:500万円)
■小泉文夫の研究姿勢を受継ぐ、児童向けweb教材を充実させたい(東京藝術大学音楽学部 小泉文夫記念資料室、目標:50万円)
■焼失した皇居・明治宮殿の天井画 柴田是真の作品を修復したい!(岡本明子、目標:350万円)
■自由な表現の挑戦を!作品づくりに必要不可欠な機材を導入したい(東京藝術大学染織研究室、目標:200万円)
■Memorial Rebirth 千住 2017、次世代を担う中学生を育てたい!(アートアクセスあだち 音まち千住の縁、目標24万円)
READYFOR 株式会社が運営する「Readyfor」は2011年3月よりサービスを開始し、これまで6200件以上のプロジェクトを掲載、26万人から38.8億円以上の資金調達を成功させている国内最大級のクラウドファンディングサービス。近年、新たにスタートした大学の資金調達やPRをサポートする「大学向けクラウドファンディング Raedyfor College」には、東京藝術大学、筑波大学が参加している。
【関連リンク】「東京藝大×クラウドファンディング」特設ページ