情景を温かな眼差しで切り取る“生粋の旅人”――牧 利保の回顧展が開催中

2017年05月26日 15:48 カテゴリ:最新のニュース

 

「信州風景」2001年 池田町立美術館蔵

「信州風景」2001年 池田町立美術館蔵

 

東京・品川で生まれ、横浜を中心に活躍した画家・牧利保(まき・としやす、1920~2006)。その画業を振り返る展覧会が、長野・安曇野の北アルプス展望美術館で開催されている。

 

戦後、川崎で勤労者美術の振興に尽力した牧は、その活動が機縁となり1961年よりブラジルへ招かれる。翌年ブラジル国立リオ芸術大学の名誉教授となり、1974年にはブラジル政府公認、サンフランシスコ最高位勲章グランデ・オフィシャル章を授与されるなど、日本との文化交流に貢献した。今展の会場である長野県池田町とも縁は深い。「池田」の名がつく1市6町が集まった「全国池田サミット」の文化顧問を務め、全国の池田町の風景を描き、スケッチ紀行文集も発行している。

 

「池田町の風景」1993年 池田町立美術館蔵

「池田町の風景」1993年 池田町立美術館蔵

 

活動の軸となったスケッチは、確かな素描力に裏打ちされた、迷いのない力強い線とモティーフを白く残した地肌の使い方が特徴的。油彩ではマチエールと豊かな色調が印象に残るが、スケッチでは巧みな描線が画面にさらなる魅力を与えている。その画風は豪快でいて洒落物であった画家の人柄をも感じさせる。

 

左:「信州」1996年 池田町立美術館蔵  右:「北海道・サロベツ原野より利尻をのぞむ」1976年 個人蔵

左:「信州」1996年 池田町立美術館蔵  右:「北海道・サロベツ原野より利尻をのぞむ」1976年 個人蔵

 

今展では生粋の旅人であった牧が描いた、長野・横浜・北海道をはじめとした日本各地の風景画を中心に、海外の街並みや日本の伝統芸能をテーマにした作品、静物画やスケッチなど約100点を展示。北アルプス連峰と安曇野の広大な景観を一望できる同館で、実際の風景と牧が切り取った風景のそれぞれを堪能してほしい。

 

「有明山」1986年 池田町立美術館蔵

「有明山」1986年 池田町立美術館蔵

 

「サントドミンゴ」2002年 個人蔵

「サントドミンゴ」2002年 個人蔵

 

【会期】2017年4月29日(土・祝)~6月18日(日)

【会場】北アルプス展望美術館 展示室A・B(長野県北安曇郡池田町大字会染7782)

【TEL】0261-62-6600

【休館】月曜

【開館】9:00~17:00(入館は16:30まで)

【料金】一般800円 高・大生500円 中学生以下無料

 

【関連リンク】北アルプス展望美術館

 


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