大画面を中心に鮮烈な色彩とダイナミックな構成により独自の表現を続ける画家・中村佳代(静岡県生まれ)が、東京・青山の始弘画廊で1年半ぶりとなる新作展を開催する。
中村は、青山学院大学を卒業後、暮らしの手帖社に勤務。同社を退社後、マヤ文明やドン・キホーテをテーマとしたシリーズなどで知られ、「太陽の画家」と呼ばれた利根山光人(1921~94)に師事して絵を学ぶ。奇しくも当時の『暮らしの手帖』編集長・花森安治と利根山は親密で、中村は2人を心から敬愛していると語る。
利根山から自由に描くよう指導されたという中村は、近年「手」をモチーフとした作品を主に制作している。顔以上に表情豊かで雄弁な手に現れる人の心を真摯にキャンバスと向き合いながら描き出し、その画面は現代社会に生きる人の在り様を問うているようだ。「天と地の恵みがあってこその人」と語る画家は、大作《生まれ、還える》で、生まれてから死ぬ前の人の一生を描いた。中央の躍動的な赤から右側の暗色へと巧みに構成し、また、その作品名には死をも肯定的に捉えようとする画家の死生観が感じられる。
3mを超える大作を中心に新たにクロッキーも展示。前回と同様に画廊の中庭にも大作を展示するなど、画家の世界観を味わえる展観となることだろう。
【会期】2017年6月5日(月)~17日(土)
【会場】始弘画廊(東京都港区南青山5-7-23 始弘ビルB1F)
【TEL】03-3400-0875
【営業時間】11:00~19:00(最終日17:00まで)
【休廊】日曜