彼女は夢にすべてを賭けた――
19世紀末ベル・エポックの時代に、世界にひとつのダンスで熱狂を巻き起こし、ロートレック、ロダン、コクトーらのミューズとなったロイ・フラー(1862~1928)を描いた映画『ザ・ダンサー』が、6月3日より新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座、Bunkamuraル・シネマほかで全国公開されている。
印象派やキュビズムなどの新たなアートが花開いた時代。マネやロートレックが描いたことでも知られる「フォリー・ベルジェール」でのステージで、一夜にして時の人となったロイ・フラー。自ら設計した色とりどりの照明の中で、ふわりとしたシルクの衣装をまといながら激しく即興的に踊る「サーペンタインダンス」はパリに一大旋風を巻き起こし、ジュール・シェレやロートレック、ロダン、エミール・ガレ、ジャン・コクトーら名だたるアーティストを魅了する。しかし鮮明な映像や写真がほとんど残っていなかったために、その名は歴史に埋もれていたが、近年再び注目され、”モダンダンスの祖”として評価する向きも出ている。
監督のステファニー・ディ・ジューストは本作が初の監督作品。これまではミュージックビデオの分野で活動していたが、偶然ロイ・フラーの写真と出会ったことで長編映画の世界に足を踏み出したという。ロイ・フラーには、ミュージシャンとして大ブレイクを果たし、『博士と私の危険な関係』(2012年)での主演が話題となったソーコ。1カ月の間、1日6時間の猛特訓を受けて見事に自分のものとしたそのサーペンタインダンスは、まさに本作のクライマックス、必見のシーンと言えるだろう。
また、劇中でソーコに劣らぬ存在感を発揮するのが、ジョニー・デップとヴァネッサ・パラディの娘で期待の新星として注目を集めるリリー=ローズ・デップ。斬新な発想と過酷なトレーニングを重ねて名声を得たロイとは対照的に、その自然で優美な身体表現のみで上り詰めた20世紀を代表するダンサー、イサドラ・ダンカンを見事に演じきっている。加えて『サンローラン』『たかが世界の終わり』で高い評価を得たギャスパー・ウリエルが、ロイのダンスに魅了され、その心の支えとなるルイ・ドルセー伯爵を演じる。
アメリカの農家で生まれ育った貧しい少女は、情熱と信念のみによってパリでの名声を手に入れ、同時に様々なものを失った。伝説のダンサー、ロイ・フラー。悲しくも美しい真実の物語をぜひ観てもらいたい。
映画『ザ・ダンサー』
第69回カンヌ国際映画祭ある視点部門正式出品 第42回セザール賞衣装デザイン賞受賞
監督:ステファニー・ディ・ジュースト
脚本:ステファニー・ディ・ジュースト、サラ・ティボー、トマ・ビドガン
出演:ソーコ(「博士と私の危険な関係」)、リリー=ローズ・デップ(「Mr.タスク」)、ギャスパー・ウリエル(「たかが世界の終わり」)
原題:La Danseuse/2016年/フランス・ベルギー/仏語・英語/108分
配給:コムストック・グループ/配給協力:キノフィルムズ
宣伝:セテラ・インターナショナル
予告編
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