日本陶磁協会設立70周年記念事業としてスタートした日本陶磁協会「現代陶芸奨励賞」は、陶芸部門(陶芸作品)および産業部門(産業陶器)における優れた作品に贈られるもので、伝統からオブジェまで幅広い作品を対象に、ジャンルを問わず募集を行っている。昨年度の第1回北海道展に続いて、第2回福井・石川・富山展が富山市佐藤記念美術館(~6/30)、福井県陶芸館(7/1~17)で開催され、この後、石川県九谷焼美術館(9/1~18)に巡回する。
この公募展は全国47都道府県を対象に毎年異なる地域ごとに開催され、地方に埋もれている優れた陶芸家および新人の発掘を目的としている。今回は福井・石川・富山の北陸三県で作品を募集し、福井県から21人、石川県から42人、富山県から16人が入選した。入選作品の中から、大樋陶冶斎氏(陶芸家・文化勲章受章)、秋元雄史氏(東京藝術大学大学美術館館長)ら8名の審査員で入賞作品の候補を選んだ結果、残念ながら産業陶器部門からは候補に残らなかった。よって陶芸部門から5点選ぶことにし、最終的に残った6点より、一番点数の高かった北濱芳惠氏を優秀賞とし、残りの5名を奨励賞とすることで意見がまとまった。
奨励賞受賞の池上美栄子氏(富山県射水市)の《ドレスを纏って》はドレスの流れを表現した女性らしい柔らかなフォルムの作品。土本訓寛氏(福井県越前町)の《焼〆壺》は窯変による火色の変化が美しい壺である。田端和樹夫氏(石川県珠洲市)の《珠洲焼窯変壺「静か」》は炎と土の自然な動きによって生じるグラデーションが魅力的で、現代九谷焼の若手作家、田畑奈央人氏(石川県小松市)の《イグアナのオブジェ》と中田雅巳氏(石川県川北町)の《SEN》は、九谷焼の素材と技術による新しい造形の可能性への挑戦と言える。
そして、優秀賞に選ばれた北濱芳惠氏(石川県白山市)の《雲景》はプラチナを塗っては焼くという行為を繰り返し、雲の光と影の微妙さを表現していた。
受賞作品は2018年2月、銀座・和光ホール「日本陶磁協会賞受賞作家展」にて展示される。
入選の79人(作品81点)という数字についてはやや少なかったようにも思えるが、この賞の目的からすると100人前後が理想的であろう。特に福井から21名が応募入選し、その中にいけばな草月流の御家元が含まれていたこと、これまで公募展には応募したことのないベテラン作家が、本展の主旨に賛同して出品されたことなどは特筆に価する。
(日本陶磁協会常任理事)
「第2回 現代陶芸奨励賞」入選作品一覧
【陶芸部門】
朝井仁美、池上 猛、池上美栄子、石丸 暁、伊豆蔵幸治、板倉克之、板橋廣美(特別出品)、井上雅子、岩国英子、大樋陶冶斎(特別出品)、大屋宇一郎、岡本茂樹、加藤 聡明、河内範子、河島 洋、北濱芳惠、北村風巳、北村正樹、小泉洋介、越野由香、米谷彰能、小谷内和央、齊田 博、佐藤 亮、島村廣志、清水和也、清水泰美、下谷礼次郎、釋永由紀夫、釋永 陽、菅谷宏子、杉井とみの、武腰 潤(特別出品)、武澤信雄、竹中 実、田島正仁、多田幸史、田畑奈央人、田端和樹夫、多間俊太郎、為重 功、千田里実、勅使河原 茜、戸出克彦、徳田八十吉、土本久美子、土本訓寛、中 憲一、中田一於(特別出品)、中田雅巳、中村厚子、中村卓夫(特別出品)、中村 豊、林 千賀子、林 良茂、原田直治、半田 濃史、日向 光、日向 豊、福島宏治、ふじのまさ代、桝田屋光生、松井勝彦、南 絢子、宮長由紀、宮本雅夫、三好建太郎、もうりゆかり、谷敷正人、安井一夫、山田智子、山近 泰、山本 篤、山本長左(特別出品)、吉田美統(特別出品)、吉田幸央、吉野香岳、米田 和
【産業陶器部門】
日向 豊、南 繁正、山本長左
【展覧会】第2回日本陶磁協会 現代陶芸奨励賞 福井・石川・富山展
【石川展】2017年6月1日(木)~11日(日) 石川県立美術館 ※終了
【富山展】2017年6月15日(木)~30日(金) 富山市佐藤記念美術館 ※終了
【福井展】2017年7月4日(火)~17日(月・祝) 福井県陶芸館 ※開催中
【九谷展】2017年9月1日(金)~18日(月・祝) 石川県九谷焼美術館
【関連リンク】公益社団法人 日本陶磁協会