展示タイトルは「東京発 建築民族誌-暮らしのためのガイドブックとプロジェクト」
国際交流基金は8月30日、第16回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展(2018年5月26日~11月25日開催)の日本館展示プランを発表、キュレーターはアトリエ・ワンの貝島桃代に、展示タイトルは「東京発 建築民族誌ー暮らしのためのガイドブックとプロジェクト」に決定した。
キュレーターに就任した貝島桃代は1969年東京都生まれ。現在筑波大学芸術系准教授、スイス連邦工科大学チューリッヒ校建築振る舞い学教授。92年塚本由晴と建築ユニット「アトリエ・ワン」を設立。住宅、公共建築、駅前広場などの設計に携わる傍ら、建築を軸とした都市のフィールドワークを多数行っている。
このほか、ETHZ Studio Bow-Wow(スイス連邦工科大学チューリッヒ校建築振る舞い学講座)、Laurent Stalder(スイス連邦工科大学チューリッヒ校建築理論教授、建築理論・建築史研究所所長)、そして井関悠(水戸芸術館現代美術センター学芸員)で今回のキュレーターチームは構成される。
展示プランの主軸となるのは「ガイドブック」。貝島は1996年より、黒田潤三・塚本由晴との共同プロジェクト「メイド・イン・トーキョー」(展覧会および建築ガイドブック)を通し「暮らし」に着目したフィールドワークに取り組んでいるが、今回は「メイド・イン・トーキョー」が世界各地で呼び起こした同趣向のガイドブックなどを総覧しながら、ディスカッションの深化をはかる。展示内容は次の4つ。「①ガイドマップを収集、マッピング化」「②ガイドブックの広がり(東京から他の都市へ、都市から自然へ、調査から実践への展開)を分析、提示。制作者へのインタビューなどのまとめ」「③建築ガイドブックから派生した実践について取材し、模型、映像などでレポート」「④横丁の制作、これを活用した建築・都市論の議論の場としてのカフェバーの定期的運営と記録・発信」。展示予算は4000万円。
そのほかの展示プランとしては、東北4県の防潮堤の建築プロジェクトを検証する阿部仁史の「Walls of Titan 巨人の壁」をはじめ、小渕祐介「Resonance 共鳴する空間」、田瀬理夫「PASSIVE ARCHITECTURE & ACTIVE LANDSCAPE with NATURE 建築は敷地を超えて緑をつなげるか?」、中島直人「POLY-CULTURAL URBANISM – towards a post “Olympic City” ―東京の文化資源をプロジェクトし、編集する」、橋本純「Freespace/「起こり」の場所/ヴェネチアの空中井戸広場」の5つが上がった。
選考委員長を務めた松本透は「建築はもともと複数の機能をできれば美しいフォームで箱に収めたものであるが、貝島は建築の雑多な機能の雑居性に着目した」と語り、「ゼロからの創造というよりも、正負の雑多な遺産をやりくりしながら未来を構想している」点を選定理由として挙げた。国際展事業委員会メンバーは、松本のほか金田充弘(東京藝術大学准教授)、倉方俊輔(大阪市立大学准教授)、曽我部昌史(神奈川大学教授)、塚本由晴(東京工業大学教授)の4名。従来は美術関係者の比率が高かったが、より審査の専門性を高めるために、今回から建築関係のメンバーを中心に構成された。
第16回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展の総合テーマは「Freespace フリースペース」。2010年には石上純也が、12年には伊東豊雄が金獅子賞を受賞するなど、日本館はこれまでに高い評価を受けているが、貝島も「結果がついてくれば嬉しい」と語った。今後は12月までにガイドブックを収集し、それを基に具体的な制作に入る予定。
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