仏教文化の足跡、日本の風景、シルクロードの作品群が一堂に
:松井宏典(上田市立美術館学芸員)
仏教文化の足跡、美しい日本の風景、そして悠久のシルクロードなどを、入念な取材と壮大な構想力で描いた画家・平山郁夫(1930-2009)。旧来の日本画の範疇に留まらない世界観を、静謐かつ幻想的に描き出した作品群は、今なお多くの人々の記憶に刻まれている。
そして、文化財保護の提唱・実践者としても広く知られ、ユネスコ親善大使を務めるなかで世界各地の文化遺産の保護に奔走。その活動はグローバルな共感を呼び起こし、特に昨今の国際情勢の中では、人類共有の遺産の保護と継承といった平山の理念が、焦眉の対応を後押しするものとなっている。
平山にとって、画家としての創作活動と文化遺産の保護活動は切り離すことのできないものであった。今回、上田市立美術館で開催する企画展「平山郁夫展―悠久の旅とシルクロードの遺宝―」では、平山郁夫シルクロード美術館のコレクションをもとに、この表裏一体ともいえる2つの活動に焦点をあて、一堂に紹介するものである。
ユーラシア大陸を東西に結ぶ遥かなる道・シルクロード。それは、画家・平山郁夫が描き続けた終生のテーマである。本展では、シルクロード絵画の集大成ともいえる連作「大シルクロード・シリーズ」の最初の作品で、オレンジ色と群青色、太陽と月の対比が美しい《シルクロードを行くキャラバン―東・太陽―》と《シルクロードを行くキャラバン―西・月―》そして《古城》からなる三部作をご紹介するほか、絹の道の東の終点・水の国日本を描いた大作《流水間断無(奥入瀬渓流)》などをご覧いただく。
また、平山夫妻が蒐集し、今や世界屈指ともいわれるシルクロードコレクションから、数千年の歴史を反映した彫刻や絵画、ガラス器や工芸品なども展示する。全体で150点を超える展示作品は、きっと鑑賞者の感性と好奇心とを刺激し、美と歴史の時空を満喫していただけよう。平山郁夫の残した足跡を改めてたどりながら、雄大な世界をご体感いただきたい。
【展覧会】 平山郁夫展 悠久の旅とシルクロードの遺宝
【会期】 2017年9月23日(土・祝)~11月12日(日)
【会場】 サントミューゼ 上田市立美術館(長野県上田市天神3-15-15)
【TEL】 0268―27―2300
【休館】 火曜
【開館】 9:00~17:00(入場は16:30まで)
【料金】 一般1200円 高校・大学生800円 小・中学生400円
【関連リンク】 上田市立美術館
■オープニングトーク
【開催】 9月23日(土・祝) 13:30~
【講師】 大塚裕一(平山郁夫シルクロード美術館学芸室長)
【会場】 同館2階展示室
【料金】 無料(ただし本展の観覧料が必要)
■学芸員によるギャラリートーク
【開催】 10月8日(日)、22日(日)、29日(日)、11月11日(土) 各日13:30~
【会場】 同館2階展示室
【料金】 無料(ただし本展の観覧料が必要)