岩絵の具や金など、古来より用いられてきた素材の美しさを好みながら、既存の日本画的様式やコンセプトにとらわれない作品で注目される新鋭・田嶋健太郎が、李朝陶磁を中心に幅広い古美術品を扱う東京・青山の大塚美術で個展を開催している。
田嶋は1984年東京都生まれ。2011年に東京藝術大学絵画科日本画専攻を卒業。以来、団体に属さずギャラリーでの作品発表を主体に活動する。主な個展に東京・京橋の白銅てい画廊での「芽」(2016)「結い」(2017)。
おぼろげに描かれた人物像、月や花、器物等のモティーフは、刹那的であるよりも、むしろ時間性を越え、静謐な広がりを見せる。内観し、生まれたものを写し、育てる、という田嶋の絵画制作において、描かれたものすべては、画家自身の心象の断片である。ロマネスク美術や仏教美術、東洋のやきものに惹かれると語る作家にとって、個人や肉体的な時間を遥かに超えた、ただそこに“存る”ものの存在が、多くの霊感を与えているのだと思われる。
今回の個展は、千体仏に着想を得たという大作《只》や古色を帯びた画面に柔らかな白の器肌が浮き立つ《空》など新作約10点と、李朝陶磁、家具、仏教美術などの古美術をあわせて展示するという試み。繊細な岩絵の具の重なりによって生まれる、抑えられた、しかし深みのある画面は、琳派など江戸絵画を端緒から連なる現代日本画とは趣きを異にし、心地よく古きものと親和する。静謐にして奥深く、研ぎ澄まされた緊張感をも感じさせる田嶋の世界と、その眼差しによる“見立て”の妙。ぜひ足を運んで味わってほしい。
【会期】2017年10月30日(月)~11月5日(日)
【会場】大塚美術(東京都港区南青山5-14-4 河合ビル1F)
【TEL】03-3486-7610
【休廊】会期中無休
【開廊】11:00~18:00(最終日は17:00まで)
【関連リンク】大塚美術