東京・六本木のワコウ・ワークス・オブ・アートで、ドイツを代表するアーティスト ゲルハルト・リヒターの2年ぶり10度目の個展「Painting 1992‒2017」が12月16日より開催されている。会場では日本初公開の最新作とともに、3点の世界初公開作品も並ぶ。
リヒターは1932年ドレスデン(旧東ドイツ)生まれ、ケルン在住。1972年のヴェネチア・ビエンナーレを皮切りに、ドクメンタなど多数の国際展に参加し、1997年には第47回ヴェニス・ビエンナーレ金獅子賞と高松宮殿下記念世界文化賞を受賞。モノクロの写真を元に描いた絵画「フォト・ペインティング」や、色見本のような幾何学的な絵画「カラー・チャート」など様々なシリーズを通し、絵画性、そして写真性とは何かを考察し続けている。日本では2005年に金沢21世紀美術館と川村記念美術館で回顧展を開催。現在はオーストラリアのクイーンズランド州立美術館とベルギーのゲント現代美術館で個展が開催されている。
ワコウ・ワークス・オブ・アートでは2015年にも油彩新作展を開催し注目を集めたが、今回は同画廊の開廊25周年記念展として、1992年から今年までの25年間の作品をリヒター自らが選りすぐり展示構成を行った。アトリエに大切に保管されていた世界初公開の1992年~2000年代の油彩画3点、そして2016年から今年にかけて制作され、ケルンやドレスデンの美術館で公開されてまもない最新油彩画5点を出品。また2011年、その制作スタイルに大きな変化がもたらされる直前に描かれた抽象画も1点展示(リヒターは今作の完成後、デジタル技術の駆使で話題となった「STRIP PAINTING」シリーズの制作を開始)。さらに風景画の《Sils Maria》(2003年)や、写真の上に油彩やエナメルで描いた「Over Painted Photograph」シリーズの作品も並ぶ。手法は様々だが、色彩が視界に飛び込んでくるようなその作品群は、知覚とは何かを改めて鑑賞者に考えさせる。
今展に際し展覧会カタログと評伝の2冊の書籍が同時刊行され、評伝内でリヒターはついに「自由になった」と語っている。その制作の軌跡、そして同画廊の25年間の歩みをあわせて振り返る好機と言えるだろう。
【会期】2017年12月16日(土)~2018年1月31日(水)
【会場】ワコウ・ワークス・オブ・アート(東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル3F)
【休廊】日・月曜、祝日、2017年12月28日(木)~2018年1月5日(金)
【営業時間】11:00~19:00
【関連リンク】ワコウ・ワークス・オブ・アート