現代音楽の分野でいくつもの優れた作品を残してきた一柳慧。彼が芸術総監督をつとめる「公益財団法人 神奈川芸術文化財団」が主催する公演が神奈川県立音楽堂で開催される。
一柳と言えば「音楽とは何か」を常に追求し、音の根源を探るような活動を繰り広げてきた作曲家である。その問いの答えを探し、他ジャンルの作家との文化横断的な仕事も重ねてきた。例えば1990年に発表した交響詩≪ベルリン連詩≫では、詩人・大岡信の連詩の在り方に深く共感し、その在り方を音楽へと昇華させるなど、他ジャンルとの出会いのなかで音楽、ひいては芸術の可能性を模索してきた作家なのである。
「神奈川芸術文化財団 芸術監督プロジェクト ミュージック・クロスロード」と名付けられた本公演は、KAAT神奈川芸術劇場の芸術監督の白井晃が空間監修として一柳とタッグを組む。白井の空間イメージを具現化するため映像作家の須藤崇規が映像ディレクションで加わり、演奏中のホールの壁にイメージを投射、それ以外にもホワイエ(ロビー)のいたるところにビデオモニターを置くなど、舞台だけでなく音楽堂全体を楽しめる仕掛けが施される。
音楽プログラムは一柳がセレクトし、40代、20代、そして一柳を含めた3世代の作曲家の作品による。とりわけ、40代の山本和智による3人の筝奏者と室内オーケストラのための≪散乱系≫は、6面のうち3面の筝に計37本の絃を結びつけ、30メートル離れた客席最後列まで張り巡らす、という音響インスタレーション的な面をもつ前代未聞の試みであり、美術が好きな鑑賞者も楽しめる作品だ。
音楽、映像、空間と異なるフィールドの才能がぶつかり合い、生まれる芸術の火花をこれを機に味わいたい。
神奈川芸術文化財団 芸術監督プロジェクト「ミュージック・クロスロード」
【曲目】森円花 = ≪音のアトリウムⅢ≫~独奏チェロとオーケストラのための~
【曲目】一柳慧 = ピアノ協奏曲第6番≪禅―ZEN≫
【曲目】山本和智 = 3人の筝奏者と室内オーケストラのための≪散乱系≫
指揮:杉山洋一
管弦楽:神奈川フィルハーモニー管弦楽団
【開催】2018年1月20日(土)
【会場】神奈川県立音楽堂(横浜市西区紅葉ヶ丘9-2)
【TEL】045-263-2567
【開演】14:00~(13:30開場)
【チケット】全席指定(税込) 一般4,000円 特別ペアお二人で7,000円 24歳以下2,000円 ※好評発売中
◆チケットかながわ (ウェブ受付24時間)/0570-015-415(10:00~18:00)
◆音楽堂窓口(13:00~17:00)
◆KAAT神奈川芸術劇場窓口(10:00~18:00)
【関連リンク】「ミュージック・クロスロード」特設サイト 神奈川県立音楽堂