伝統的な日本画技法に加えて、常識にとらわれない様々な手法を取り入れながら独自の画面を作り上げ、美術の歴史に名を刻んだ日本画家・加山又造(1927~2004)。今展は、伝統と革新をテーマに多彩な作品を生み出した加山の世界を現代の最新技術をもって再現し、より広くその魅力を伝えようとする試みである。
加山は円山派の絵師であった祖父、西陣織の図案家の父のもとで育ち、東京美術学校卒業後は山本丘人に師事。革新性に満ちた作品を次々と発表して戦後の日本画壇に新風を吹き込み続けた。国内はもとよりパリ、ロンドン、北京、上海などで個展が開かれ、今日においても国際的な評価は高い。1997年に文化功労者、2003年に文化勲章を受章。伝統に学びながらも、描画に役立つものならば積極的に取り入れる合理的な面もあわせもち、山梨・身延山久遠寺の《墨龍》や京都・天龍寺の《雲竜図》など天井画の制作では、農業などで使われる噴霧器を用いたという逸話が知られている。また、自らの作品を後世に伝えるべく、美術陶板の製作や作品のデジタルアーカイブにも積極的に取り組んだ。
今展では、各地の美術館などに収蔵されている加山の代表作を展示するとともに、最新の技術に新たに生まれ変わった“リクリエイト”作品を一堂に紹介する。2016年に開催されたG7伊勢志摩サミットの会場で展示されて話題となった美術陶板《おぼろ》をはじめ、天井画《墨龍》、《雲龍図》の原寸大サイズでの再現や、また加山の世界に鑑賞者が入り込むようなインスタレーションなど、従来の展覧会と一線を画したアプローチを通じて、今もなお人々を魅了し続ける加山の世界観を表現する。特殊メイクアップアーティストのJIROが、女優・宮城夏鈴の肌に直接レースの模様を描いて《黒い薔薇の裸婦》を再現したデジタル映像作品をはじめ、現代のクリエイターが加山の世界をどのように“リクリエイト”するのかも見どころの一つだ。
「100年に一人の天才」と言われ、日本画の新たな可能性を切り開いた加山又造。その新たな魅力に気づかせてくれる意欲的な展示をぜひ体感してほしい。
【展覧会】Re 又造 MATAZO KAYAMA|加山又造アート展
【会期】2018年4月11日(水)~5月5日(土・祝)
【会場】EBiS303 イベントホール(東京都渋谷区恵比寿1-20-8)
【TEL】03-5777-8600(ハローダイヤル)
【休館】会期中無休
【開館】11:00~20:00(入館は閉館30分前まで)
【料金】一般2,000円 学生1,300円 小学生以下、障がい者手帳等持参者とその付添者(1名)は無料
【関連リンク】「Re 又造 MATAZO KAYAMA|加山又造アート展」公式サイト