NYクリスティーズで5月8日から10日の3日間、デイヴィッド・ロックフェラー(1915~2017)と妻・ペギーが保有していた美術品約1500点がオークションにかけられ、総額約8億3260万ドル(約910億円)で落札された。この額は、2009年にイブ・サンローランコレクションが記録した4億4300万ドルを上回り、個人コレクションの競売としては過去最高総額となる。
今回オークションにかけられたのは、印象派絵画をはじめ、エドワード・ホッパーやジョージア・オキーフらの現代絵画、欧州のアンティーク家具、アジア美術、宝飾品、磁器セットなど、ロックフェラー家が19世紀から収集してきた美術品の数々。その中で最高落札額を記録し話題を呼んだのは、ピカソの「バラ色の時代」の絵画《花かごを持つ少女》(1905年)で1億1500万ドル(約125億円)。次いでモネの《睡蓮》(1914~17年頃)が8400万ドル(約92億円)、アンリ・マティスの《マグノリアとオダリスク》(1923年)が8075万ドル(約88億円)で落札され、ともに作家のオークションレコードを塗り替えた。ロックフェラーから「ロックフェラーセンター」への壁画制作を頼まれたが、群衆の中にレーニンの肖像を描き一時絶交状態となったメキシコの画家、ディエゴ・リベラの油絵は、推定落札額の500万~700万ドルを上回る976万ドル(約10億円)で落札された。
ロックフェラー家第3当主であったデイヴィッド・ロックフェラーは銀行家、実業家として活躍する一方で、1978年に日本文化を伝える非営利団体「ジャパン・ソサエティー」の名誉会長に就任。1988年の創設時から1990年まで高松宮殿下記念世界文化賞の国際顧問を務め、その後名誉顧問に転じるなど、親日家としても知られていた。生前から自らの死後に私財の美術品をすべて売却し、売上金を教育、環境、文化振興団体に寄付することを表明しており、今回の売上金は全額、ニューヨーク近代美術館をはじめとする、故人が選んだ12の慈善団体に寄付される。
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