モノクロームの砂浜に「影」を刻む――針で描く画家・八島正明の新作展が開催

2018年05月28日 10:00 カテゴリ:最新のニュース

 

《はないちもんめ》2018年 130.3×162.1cm

《はないちもんめ》2018年 130.3×162.1cm

 

針を用いてモノクロームの風景を掘り起こす八島正明の新作個展が、6月4日より銀座・ギャルリー志門で開催される。

 

八島は1936年三重県生まれ。1961年から2001年まで美術文化展に出品し、75年に第18回安井賞を受賞。東京国立近代美術館、愛知県立美術館をはじめとする各地の美術館に作品が収蔵されている。

 

長年にわたり追求するのは、影の表現だ。きっかけは三重大学在学時、広島の平和記念資料館を訪れた際に、原爆の熱線によって刻まれた石段の人影を目にしたこと。被爆者の「生きていた証」が影として残されたことを知り、衝撃を受けると同時に、終戦直後に亡くなった自身の幼い妹が思い出された。2歳で亡くなった妹は、一枚の写真もなく、その姿がどこにも記録されていない。八島はモノクロームの世界に引き込まれ、人の痕跡を影として残すようになった。

 

独自の画面の土台となるのは、キャンバスに白い油絵具で地塗りをし、上に黒い油絵具を重ねたもの。木綿針で黒色の層を引っ掻くことで、白の下地が表出し、光と影が織りなす静寂の世界が広がる。

 

2011年の福島原発事故を機に、近年は目に見えない放射線の恐怖も題材とする。広島の原爆がしばしば「黒い雨」で表現されるのに対し、八島は福島の放射能を「白い粉」として可視化している。

 

今回は砂浜を舞台とし、足跡や轍を一つの「影」として捉えた作品を中心に展示。八島は「80年以上生きてきた中で、色んな人の影を踏んだり、すれ違ったりして、人の痕跡に触れてきたことに今改めて気づいた」のだと語る。たびたび描かれる目隠しした人物は、失明した被爆者や、光のない世界を生きる人など、様々な命を連想させる。また、哀しい由来が隠されているとも言われる「はないちもんめ」「かごめかごめ」を1人で遊ぶ人物も印象的だ。モノクロームの世界に刻まれたいくつもの像について、想いを巡らせたい。100号からサムホールまで、新作22点が並ぶ。

 

《轍のある景色》2018年 130.3×162.1cm

《轍のある景色》2018年 130.3×162.1cm

 

《踊る人》2018年 72.7×90.9cm

《踊る人》2018年 72.7×90.9cm

 

《なわとび》2018年 72.7×90.9cm

《なわとび》2018年 72.7×90.9cm

 

《かごめかごめ》2018年 60.6×72.7cm

《かごめかごめ》2018年 60.6×72.7cm

 

【会期】2018年6月4日(月)~9日(土)

【会場】ギャルリー志門(東京都中央区銀座6-13-7 新保ビル3階)

【TEL】03-3541-2511

【休廊】無休

【開廊】11:00~19:00(最終日は17:00まで)

【料金】無料

 

 


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