全国美術館会議(会長・建畠晢)は6月19日、声明「美術館と美術市場との関係について」を、臨時理事会の承認を経て発表。「美術館は自ら市場への関与を目的とした活動を行うべきではない」と表明した。
日本の美術館がともに考え行動することを目指し1952年に設立された全国美術館会議には、現在389館(国立9館、公立246館、私立134館)が参加。総会や講演会などの定期的な開催を通し、連携協力を図っている。
今回の異例の声明は、4月17日の未来投資会議構造改革徹底推進会合「地域経済・インフラ」(中小企業・観光・スポーツ・文化等)第4回会合に、文化庁より「アート市場の活性化に向けて」と題した資料が提出されたことに起因する。その主旨は、国内の美術館や博物館の一部を「リーディング・ミュージアム(先進美術館)」として指定し、国から補助金を交付して体制を強化するというもの。この内容は5月19日、読売新聞によって報じられ、特に「アート市場活性化のために美術館のコレクション売却を促す」という記載が大きな波紋を呼んだ。
声明文では、2017年の総会で議決された『美術館の原則と美術館関係者の行動指針』に基づき、美術館と美術市場との関係についての基本的な見解が表明されており、「美術館が信頼すべき寄贈先と見なされるため」にも「投資的な目的とは明確な一線を画さなければならない」と記述されている。全国の美術館の声が、今後の政府案にどのように反映されていくのか注視したい。声明の内容は以下。
美術館はすべての人々に開かれた非営利の社会教育機関である。美術館における作品収集や展覧会などの活動が、結果として美術市場に影響を及ぼすことがありうるとしても、美術館が自ら直接的に市場への関与を目的とした活動を行うべきではない。
美術館による作品収集活動はそれぞれの館が自らの使命として掲げた収集方針に基づいて体系的に行われるべきものである。美術作品を良好な状態で保持、公開し、次世代へと伝えることが美術館に課せられた本来的な役割であり、収集に当たっては投資的な目的とは明確な一線を画さなければならない。
なお、収集活動は購入ばかりではなく寄贈も大きな比重を占めている。将来にわたって美術館が信頼すべき寄贈先と見なされるためにも、この基本方針は重要な意味を持つものである。
この声明は、『美術館の原則と美術館関係者の行動指針』のうち、以下のコレクション形成・保存に関する原則6と行動指針6に基づくものである。
美術館の原則 6
美術館は、体系的にコレクションを形成し、良好な状態で保存して次世代に引き継ぐ。
美術館関係者の行動指針 6: 収集・保存の責務
美術館に携わる者は、作品・資料を過去から現在、未来へ橋渡しすることを社会から託された責務として自覚し、収集・保存に取り組む。美術館の定める方針や計画に従い、正当な手続きによって、体系的にコレクションを形成する。
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