木と語り合うように彫り込み、観る人の心を優しく包み込むような作品を生み出す彫刻家・鈴木千賀子の個展が、東京・銀座のギャラリー杉野で開催される。
鈴木は1949年埼玉県生まれ。日本大学で薬学を学んでいた頃に人形劇に出会い、大学卒業後30代に入ってから人形劇団「カラバス」の加藤暁子に人形製作の手ほどきを受ける。その後、NHK『プリン・プリン』の人形製作を担当していた造形作家・友永詔三にマリオネット人形を、二科会の細井吉雄や創型会の牧田裕次らに木彫を学ぶなど幅広い研究を通じて現在の作風をつくりあげ、髙島屋日本橋店での個展をはじめ、各地で精力的な発表を重ねてきた。
本展は、作家の古希記念の作品集『愛の光 祈りの造形・愛しき動物たち』の出版記念展。作品集に収録された中から、《ガンジスに祈る》や新作《天使の梯子》など、木彫、陶彫、創作人形、オルゴールなど約30点を展示する。
作品集『愛の光 祈りの造形・愛しき動物たち』刊行に寄せて
「微笑みを与えてくれる作品たち」
――友永詔三(造形作家)
木を削り、作品を作り出すという言う事は、体力と時間もかかり大変な仕事です。コツコツと創り続ける鈴木千賀子さん、そんな彼女の作品には、観る者に優しさと懐かしさを与えてくれる力がある。特に擬人化された動物や鳥は愛らしく、微笑んでしまう。一体一体の作品が、今にも動き出しそうな役者の様であり、お芝居の一場面を観ている気持にさせられる。それは彼女が学生時代に、人形劇に憧れ、将来の仕事にと考えた事もあったと言う。その事が創り出す彫刻や、人形の中に生かされているのだろうと思う。美しく千賀子カラーで彩色された作品は、多くのファンをますます魅了し続けてくれる事と思います。
「変わらぬやさしさ」
――加藤暁子(人形劇研究家)
この度の作品集の出版を、とても嬉しく思います。
千賀子さんとの出会いは、当時、私が所属していた「人形劇団カラバス」で、お手伝いをされていた時のことです。(40年近く前のこと)入団を希望されていたようですが……。断念をされて、美術を担当していた私のところへ直接、頼みに来られました。人形に関したこと何かをさせて頂きたいと。初めは、資料の整理をされて、それから『三びきのくま』の人形製作をお願いしました。とても可愛い楽しい人形でした。その人形をもとに、私が演じ方をまとめて、「保育室の中の人形劇」の本を出しました。今もそのころの味わいを残した新しい人形作りを続けておられることを嬉しく思います。何よりも作品から千賀子さんの、やさしい人柄が感じられます。これからも作り続けましょうネ!
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観る人の心を動かし、何かを与えられるような作品を作りたいと長年取り組んできた。しかし、最近になって、逆に創作することで自らが救われてきたことに気がついたという。つらい時や悲しい時も無心になって彫り込むことで、祈りに似た感情が結晶した木の作品はますますふくよかなぬくもりをたたえ、観る人まで優しく包み込むのかもしれない。
【展覧会】古希出版記 鈴木千賀子の世界展
【会期】2018年11月5日(月)~10日(土)
【会場】ギャラリー杉野(東京都中央区銀座1-5-15)
【TEL】03-3561-1316
【営業時間】11:00~18:00(最終日は17:00まで)
【料金】無料
【関連リンク】ギャラリー杉野