松澤宥(1922~2006)は、長野県諏訪郡下諏訪町に生まれ、同地を拠点に国内外に芸術を発信し続けた、日本を代表するコンセプチュアル・アーティスト。本展は、2022年2月2日の松澤宥生誕100年を記念した回顧展となっている。
芸術家としての原点である建築や詩から、美術文化協会展や読売アンデパンダン展等に出品された絵画やオブジェ、1964年に「オブジェを消せ」という啓示を受ける前後より国内外で発表された言語による作品やパフォーマンスまで、松澤の多彩な作品や活動を資料や写真を交えて紹介する。
また、同時代の批評家や作家が多く訪れた伝説のアトリエ「プサイの部屋」については、一部を再現するとともにVRで体験できる展示も行う。
近年、多くの研究者や諸機関により、松澤宥によって保管されていた資料や作品の調査研究が進められている。当館もまた、文化庁委託事業として実施した「平成30年度我が国の現代美術の海外発信事業 松澤宥『プサイの部屋』アーカイブ化事業」をはじめとして、美術作品等資料のアーカイブ化を目標とした調査・整理作業を実施してきた。
松澤自身の作品、周辺資料は膨大な量であり、その研究は未だ端緒についたばかりと言えるが、本展は、これらの調査で発見された作品や資料をもとに、これまでまとめて紹介されることのなかった松澤の芸術家としての歩みを辿ることができるように構成されている。
松澤宥は郷土の文化、仏教、物理学、数学、宇宙論などへの幅広い知識を背景とし、国内外へと広がる人的交流の中で、独自の芸術を生み出した。本展が、松澤宥が追い求めた世界をあらためて考える機会となり、今後の研究の糧となることを願っている。
(長野県立美術館学芸員)
【展覧会】生誕100年 松澤宥
【会期】2022年2月2日(水)~2022年3月21日(月・祝)
【会場】長野県立美術館(長野市箱清水1-4-4)
【TEL】026-232-0052
【開館】9:00~17:00
【休館】水曜(ただし2月2日・23日開館)、2月24日
【料金】一般800円 大学生および75歳以上600円 高校生以下無料