【特集】2014 年末回顧―佐々木丞平

2014年12月24日 17:00 カテゴリ:その他ページ

 

 

文化財の世界においてこの一年を振り返っても様々なことがあった。3月にはあべのハルカス美術館、4月には三重県総合博物館、9月には京都国立博物館の「平成知新館」がグランドオープンした。また多くの美術館博物館で趣向を凝らした文化財の展示を目にすることができた。しかしいつまでも心に残る、しかも未だ癒やされることのない深い傷のようなものを今なお感じていることがある。それは東日本大震災による被災文化財の現状である。

 

多くの力の結集で文化財レスキュー事業は展開されてきた。被災文化財を一時避難させる「一次保管措置」、そして被害を被っている文化財から、塩分を抜いたり、乾燥させたり、付着した砂やほこりを取り除いたりといった「安定化処置」、そして将来の保存修理に向けての「二次保管措置」。こうした一連の作業を考えると、被災文化財のレスキュー事業も未だ道半ばの感を否めない。国立文化財機構ではこれからも東日本の被災文化財レスキュー事業を継続していくつもりであるが、一方こうした経験を通して様々なことを学習した。今後もこうした大災害は不可避のものと思われるので、いろいろ経験された方々や組織の力を結集し、日本の文化財防災の為の枠組み作りに貢献しようとの意図から、このたび国立文化財機構の中に「文化財防災ネットワーク推進本部」を立ち上げた。これも文化財を守りたいという強い意志の結集である。

 

ところで何故我々はそれほどまでに「文化財」にこだわるのだろう。その理由を考える前に、我々の身の回りに文化財というものの存在が無ければ一体どうなるのだろう。歴史も我々が拠って立つ伝統も存在しなくなる。文化財がいかに日本文化そのものを支えているかがよく分かる。日本がこれからも文化立国たらんとするならば、意地でも文化財を「守る」という姿勢を貫かなければならないと思う。その先に初めて力強く胎動する新しい文化も生み出されるのだから。

 

 

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