翌20日の開幕当日、快晴の高松港は早朝から芸術祭に向かう人々でごった返した。各島行のフェリー乗場はいずれも長蛇の列、これから出合うアートへのワクワク感が皆の表情に表われていた。
【直島】
筆者は現代アートの聖地・直島へ。直島初上陸である。
8時12分発の第1便「なおしま」丸は草間彌生よろしく赤い水玉模様のペイント外装。早、芸術祭気分を味あわせてくれる。50分の船旅をデッキで過ごし、島々の方位を確認、瀬戸大橋をおぼろに見ながら、三角おにぎりの大槌島に魅せられる。写真家・緑川洋一の名作を思い出す。
直島・宮浦港では草間の「赤かぼちゃ」がフェリーを迎えてくれる。灯台のような、ランドマーク的存在。降船後、無料シャトルバスに乗り地中美術館へ。途中の急坂では自転車を押して登る人を多く見かけた。9時30分にはチケットセンターに到着、チケットセンターで入場整理券をもらい、10時オープンのところ10時30分からの入館となる。
オープンまでまだ時間があるので歩いて10分ほどの李禹煥美術館へ。緊張感ある作品群と安藤建築の醍醐味、その関係性に思わず唸らせられる。そして館内はいわずもがな、海へと通ずる館外空間も見事な造作。
その後、地中美術館へ。白く眩く照らされるクロード・モネの部屋、光と色彩に幻惑されるジェームス・タレル「オープン・フィールド」、ウォルター・デ・マリアの球体のある階段状の大空間など、各アーティストと安藤建築のコラボレーションが素晴らしい。迷路のような館内構造と光への飽くなき探究には眩暈を起こしそう。
この季節、同島ではミモザが黄色く咲き乱れる。11時30分に館を出て、無料シャトルバスに乗るためチケットセンターへ戻ると大行列、その時点で14時30分からの入場整理券を配っていた。島での3時間待ちは後の予定に大きく響く。Webでの時間予約をお薦めする。
戸髙千世子「彼方の気配」は池に舞う白く儚いオブジェ。その池の下に作られた安藤忠雄「桜の迷宮」は等間隔に植えられた桜フィールド、満開のタイミングに訪れたい。
ベネッセハウスミュージアムを見学し、松林が美しいベネッセハウスビーチを海岸沿いに歩き、草間の黄色い「南瓜」を見た後、14時20分発高松港行フェリーに乗るため港へ折り返す。100円バスに乗り、見るべき場所の多い本村地区を泣く泣く通過、狭い路地を人々が行き交う様子を眺めつつ、宮浦港へ。
宮浦ギャラリー六区では飯山由貴「生きている百物語」(春会期限定)。旧パチンコ店を改装した空間。近在の島に暮らす人々から「不思議な話」を映像や画像、聞き書きで収集展示し、空想と現実、動物と人間の関わりなどの在り方を問い直すという地道なフィールドワーク。
大竹伸朗の直島銭湯「I♥湯」はやはり見ておかなくてはならない、そしてできれば入浴も。外観は灯りが点灯してからが良さそうだ。夕方までに高松に着かねばならず極彩色のネオン輝く大竹建築を見ることは叶わなかった。
開幕日の一日は穏やかな晴天で、ひねもすのたりのたりかな、の瀬戸内風景であった。海を横に見ながらの現代アート巡礼は、船の航行を遠くに眺めながらの稀有な体験、フェリーで島々を渡るのもまた楽しい。3年おきの開催に期待はふくらみ、毎回訪ねたくもなるだろう。
今回はあたふたと駆け足の訪問であったが、次回は日時に余裕をもって巡りたい。島の人々との交流や島の歴史、生活にも思いを至らせながらの現代アート鑑賞ができればと思う。
是非、現地に出掛けて自身の五感で感じて欲しい。百聞は一見にしかずである。
いざ、瀬戸内へ現代アートの旅を!
( 文・写真/窪田元彦)
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『瀬戸内国際芸術祭2016公式ガイドブック』(現代企画室刊 税込1400円)