【団体】 独立美術協会展70回記念座談会 (「新美術新聞」再録) 〈4〉

2012年10月09日 17:39 カテゴリ:その他ページ

 

 

 

重なる国際形象展

 

大津 独立美術協会というのは、70年前に個性にあふれた先生方が集まってトップスピードでスタートした会だと思うのです。それがさらにハイトップの状態になった。

私の印象では、この70年の間では国際形象展の存在とかなり重なっています。独立展だけに止まらないで、林武先生や海老原喜之助先生など独立の主要メンバーとビュッフェらフランスの作家たちとで国際形象展が形成されたのは、独立の40回展前後のことですが、私の学生時代のことでとても憧れました。その後創立会員の先生方がほとんど亡くなられて独立も徐々に下降気味になったのかな、と思っています。

それでも、独立展は応募者が、あまり減りませんでしたし、昨年は若干ながら出品者が増えました。多くの団体が下降線にある中でこれは顕著な傾向です。創立当初の志が、このところ会員全体の中で自覚されてきて、独立の魅力がまた取り戻されてきつつあるように思います。いろんなタイプの作家の方たちがいろいろな仕事を発表して、もう一度独立展を形成しつつある、そのへんが若い美大出の方に共感を与えているのではないかと私は考えています。

 

 

21世紀さらなる飛躍を

 

宝木 現状に安住することなく、21世紀に発展していくために、団体としての行動や展示のあり方などで、新しい方針へのお考えがあればきかせていただきたいのですが。

 

第70回記念独立展 松樹路人「愛の情景(青年画家U君の場合)」204.0×172.2cm 早稲田大学會津八一記念博物館蔵

奥谷 人間でいえば古希を迎えたわけですが、やはり若い人、若いエネルギーがたくさん入ってきて活況づけてくれるということが一番大切だと思います。そうした会にしなければいけませんね。

70回の記念企画として、「輝け日本油画」という展覧会が来年の2月から大阪、東京、名古屋を巡回します。その展覧会をぜひ独立の人たちにも見てもらって、われわれの先達がどういう仕事をしてきたかということを認識して欲しいですね。もちろん一般の人たちにもたくさん見てもらいたいと思っていますが、私自身、独立美術協会というのは、こんなにも日本の美術史上に残っている人がいるのだということを改めて認識しました。

近々の課題としてナショナル・ギャラリー問題(編集部注:現在の国立新美術館)も考えなければなりません。公募団体展の壁面ということを考えますと、いずれ委員会を編成して対応することになると思いますが、これも早く決めなければなりませんね。

 

絹谷 個人的には移った方がいいと思いますが、上野にはノスタルジーもありますね。

 

大津 現在の東京都美術館を春季展などの足場として残しておいて、この機会に展覧会を春と秋、2回にするというのもいいと思います。

 

宝木 絹谷先生はいかがですか。

 

絹谷 70歳の人間ならかなり思慮分別がついているところですが、進取の気性、若い心、独立の精神というものを命尽きるまで保ち続けて絵を描く座右として、新旧、絵の傾向にかかわりなく、自分の世界の構築を目指して進み、そういう気持ちをフランクに受け入れるシステムにならなければいけないと思います。古い因習にとらわれて若い芽が出ないようだと、この会は存在意義を失いますから、いいものはいいというジャッジができるような独立、風通しのいい独立、衆を頼まない独立、これが独立の独立たる所以ですから、今後もそういう方向に磨きをかけていければいいと思います。

平面である絵画の世界は、手に触れることもできないイメージを拡げてゆく、いわば夢や想像の世界なのですが、現在の私は、無いに違いない天国をあると信じる世界、信じることにより、生と死の壁が取り除かれる精神の世界を絵画を通じて探求していきたいと思います。今度の独立展の出品作もそのことを意図して描いています。

 

第70回記念独立展 桜井寛「ベッドによる男」150号

馬越 芸術というのはその時代と絶対に切っても切れない関係にあると思うのです。今いろいろな矛盾や不条理が吹さ出している世の中で、そういう危機感というものを、一人一人の作家が自分の問題としてがっちりと正面から向き合って、心の中に受け止めていくという心構えで制作をするということが必要だと思います。

第8回独立展で独立賞をとった靉光は戦争に駆り立てられ、その何年か後に中国で戦病死するのですが、そのあたりの人たちの作品は、非常に普遍的な力強さがあるのです。いま見てもそれは全く色褪せていない新鮮な力を持っています。幸か不幸か、現代はそういうところと重なり合うところが非常に多いと感じています。目をそらさないで現実を直視し、自分の身体を通して自分の芸術の精神の中に反映していく、そういう危機感の中での創造というものを私は求めます。そこにおける心の解放が芸術の役目と思います。

 

大津 やはり日本の絵画ということを、独立展では標傍していきたいと思います。絵具の材料にこだわらないということが先ず第一です。日本の伝統を踏まえた日本画というものは尊重されるべき存在であることに違いありませんが、日本人の心の中に基づいた自然発生的なハートを持っている絵画というものを目指したいと考えています。その気持ちのもとにはこれからの日本の精神的な一つの支えというのは芸術であり、とりわけ絵画の果たす役割は大きいと思います。画家として真摯に立ち向かっていきたいと考えています。

 

宝木 今日は独立美術協会が創立70周年を迎えるということで、4人の先生方のお話しをうかがいましたが、有意義な機会となったと思います。創立当初の、とりわけ今回は林武先生の個性と結びついた独立展のイメージが鮮明でしたが、それらを継承しつつ、それでは今後どのように進んでいけばいいかという将来像についても、先生方それぞれ自由で幅広い意見をうかがえ、それがすなわち独立美術協会の良さでもあると思いました。このあたりをまとめとしたいと思います。本日はありがとうございました。

 

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