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第28回日本水墨院展(国立新美術館)「春宵」95.0×59.0cmさくら……それもしだれ桜といえば、私は京都平安神宮の紅枝垂桜を見た時、唯々綺麗と感嘆の声をあげ、その絢爛さに酔いしれてしまった事を思い出します。しかし私が描きました桜花は八王子の農家の庭に、300年の年輪を数える桜樹ですが、老木に一重の清楚な花を静かに咲かせておりました。とろりとした春の日が山端に落ちようとする一瞬、淡い夕闇の中にたおやかな枝ぶりを、そよ風にまかせておりました。酔客もおらす、騒ぎも聞こえず、静かに暮れる春の宵の中に、桜と私だけが向きあいまわりの空気までが物柔らかかく、夢のような幸せなひと時でした。
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金子桃媛KANEKO TOEN
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